新型コロナウイルス感染症に対する日本生殖医学会の声明

4月1日、日本生殖医学会から声明が出されました。

新型コロナウイルスの感染拡大に際し、体外受精での移植・人工授精の延期を各医療機関に推奨する

http://www.jsrm.or.jp/announce/187.pdf

という内容です。

以下、長くなりますが全文を引用します。

令和 2 年 4 月 1 日
会員各位
一般社団法人 日本生殖医学会
理事長 市川 智彦
(公印略)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの声明
(2020 年 4 月 1 日版)
※本声明は現時点の情報をもとに策定されたものであり、今後の状況の変化に応じて必要とされる対応策
に変更があることにご留意ください。※
新型コロナウイルス(COVID-19)は感染力の高い RNA ウイルスであり、重症急性呼吸器症候群を引き起
こす新興感染症として世界的な広がりをみせています。WHO は3月11日にパンデミックを宣言し、日本国
内でも COVID‐19 感染の進行、特に感染ルートが不明な感染者の増加により、感染爆発が危惧されてい
ます。
現時点において、COVID‐19の死亡率はインフルエンザの10~15倍と考えられており、そのほとんどが
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関連したものと考えられています。COVID-19 が妊娠、特に妊娠初期の
胎児に及ぼす影響は明らかになっておらず、母体から胎児への感染の可能性は不明です。また妊婦にお
ける COVID-19 の感染リスクが高いとはいえません。一方で、妊婦において COVID-19 感染の重症化の
可能性が指摘されていることや、感染時に使用される治療薬として妊婦に禁忌の薬剤による治療が試行さ
れていることから、不妊治療による妊娠が成立したあとの COVID-19 感染への対応に苦慮することが予想
されます。また受診や医療行為に関連した感染の新たな発生も危惧されます。このような背景から、国内で
の COVID-19 感染の急速な拡大の危険性がなくなるまで、あるいは妊娠時に使用できる COVID-19 予防
薬や治療薬が開発されるまでを目安として、不妊治療の延期を選択肢として患者さんに提示していただくよ
う推奨いたします。また、既に調節卵巣刺激を開始し採卵を予定している患者さんについては、胚凍結の
上で上記の状況を踏まえて胚移植時期を検討してください。胚移植を予定している患者さんについても同
様の検討をおねがいいたします。人工授精、体外受精・胚移植、生殖外科手術などの治療に関しては、延
期が可能なものについては延期を考慮してください。
すべての患者さんに対して、感冒症状や家族・職場等の感染歴についての問診、身体所見などで
COVID-19 感染の可能性を評価し、感染が疑われる患者さんについては PCR 検査を考慮してください。医
療従事者への感染を予防するため、採卵を含む外科的処置を行う際には、サージカルマスクまたは N95
マスク、手袋、ガウン、エプロン、キャップ、フェイスシールド、ゴーグルなどの個人用防護具を用いた標準
予防策を実施してください。
日本生殖医学会では、今後も COVID‐19 感染と不妊症や妊娠との関連性についても、幅広く情報を集
めて会員に周知する予定です。下記 WHO および関連学会の声明もご参照ください。
WHO https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019
日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20200320_COVID-19.pdf
IFFS https://www.iffsreproduction.org/page/COVID-19
ESHRE https://www.eshre.eu/Press-Room/ESHRE-News
ASRM https://www.asrm.org/news-and-publications/covid-19/
ICMART https://www.icmartivf.org/news/
<参考資料>
COVID-19 に関する国際的な状況を知る上での参考までに、世界各国のARTのデータ収集・分析・普及を
行う非営利国際機関である International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technology
(ICMART) の声明文の和訳を下記に付記いたします(https://www.icmartivf.org/news/) 。
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不妊でお悩みの方へ: COVID-19 に関する ICMART からのお知らせ
主要保健機関および不妊治療専門家から、できる限り妊娠を避け、不妊治療を中断することを求
める勧告が今回初めて出されました。この勧告に伴い、子供を持つことを強く望みながら治療を変
更または中止されている方々が困難な状況に置かれると考えられます。ICMART では、今後新たな
情報が得られるまでの間、新規治療の開始を見合わせること、不妊治療に関連するその他の非緊急
処置をすべて延期することを推奨いたします。これは、健康な若者においても COVID-19 が非常に
高い罹患率・死亡率をもたらす可能性があるためです。妊娠や新生児への影響も現時点では不明で
す。
IVF 治療をすでに開始されている方には、妊娠を延期するために胚や卵子を凍結保存することをお
勧めします。凍結胚や凍結卵子の使用が妊娠率に影響を与えないことは多くのエビデンスにより示
されています。
不妊治療を受けている方は、他の方と同様に、政府や地方自治体のすべての勧告にしたがってく
ださい。私たち全員が協力することで、このウイルス大流行から受ける影響を軽減できます。また、
不妊治療が再開できるときに備えて心身の健康を保つ努力も継続してください。
ICMART(https://www.icmartivf.org/)からの推奨事項として、われわれとパートナー関係にあるWHO
および専門家機関の以下ウェブサイトをご覧いただくことをお勧めします。これらのウェブサイトでは、
COVID-19に関して科学的根拠に基づく情報や各国の対応をご確認いただけます。
世界保健機関(WHO):www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019
米国生殖医学会(ASRM):www.asrm.org
ReproductiveFacts.org:www.reproductivefacts.org
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE):www.eshre.org
国際生殖医学会(IFFS):www.iffs-reproduction.org/page/COVID-19
国際産婦人科連合(FIGO):www.figo.org
*******************************************************************

 

妊娠中に新型コロナウイルスに感染したときのリスクがわかっていない。

感染した場合、治療薬がない、治療法が確立されていない。

という現状からの声明です。

 

妊娠中の胎児への影響に関しては、まだわかっていません。

いまのところ、流産や催奇性のリスクに関しては報告がありません。

(武漢の研究チームから一例、胎児の垂直感染の研究報告がありました)

また、乳幼児への新型コロナウイルス感染も報告されているため、注意が必要です。

 

かかられているクリニックと決めていただくことですが、

当院では、

  • 胚移植、人工授精に関しては、コロナが落ち着くまで延期。
  • 採卵とそれに向けた妊活は続けられるとよい。

とお伝えして、感染リスクに対応しながら定期的な施術を行っていきます。

 

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